1897年(明治30年)は、日本が本格的な資本主義国家へと歩み出した年です。金本位制の導入により国際経済に参加し、労働運動の誕生によって社会構造も大きく変化しました。教育・文化・生活の各分野でも近代化が進み、日本は次の段階へと進み始めます。
日清戦争後、日本はなぜ急速な発展を遂げたのか?
戦後の賠償金や産業発展を背景に、日本は近代国家としての力を大きく伸ばしていきます。
明治維新からこの年に至るまでの発展の流れを時系列で確認できます。
Q. 1897年は何が起きた?
A. 金本位制が採用され、日本の通貨制度が安定しました。
Q. なぜ重要なのか?
A. 国際経済に対応できる近代的な金融制度が整ったためです。
Q. この後どうなる?
A. 経済力を背景に軍事力が強化され、日露戦争へ進みます。
→ 1904年(日露戦争)を見る
目次
1897年の重要出来事
- 金本位制が採用され、日本の通貨制度近代化が進んだ
- 八幡製鉄所建設が決定し、重工業化が本格化した
- 貨幣法が制定され、円を基軸とする経済体制が整備された
- 日清戦争後の産業発展と軍備拡張がさらに進展した
- 日本が近代工業国家として成長を加速させた
出来事・事物起源・話題
- 1月5日
- 革新倶楽部が結成される
- 1月14日
- 南米最高峰アコンカグア(標高6,960m)の初登頂に成功する
- 1月15日
- 俳句雑誌『ほとゝぎす』創刊
- 1月15日
- 東京滝野川に下瀬火薬製造所が開庁する(所長は下瀬雅允)
- 1月27日
- 実業同志倶楽部が結成される
- 2月4日
- 英清ビルマ協定が成立する
- 2月22日
- ブラジルとの修好条約が公布される
- 3月3日
- 足尾鉱毒事件の被害住民が日比谷に集結し、救済を訴える
- 3月22日
- 『ジャパン・タイムス』創刊
- 3月24日
- 内閣に足尾鉱毒事件調査委員会が設置される
- 3月29日
- 貨幣法公布(金本位制確立)
- 3月31日
- シャム(タイ)に公使館を開設し、稲垣満次郎が初代公使に任命される
- 4月1日
- 台湾銀行法が公布される
- 4月1日
- 第一次大阪市域拡張が実施される
- 4月3日
- 社会問題研究会が結成される
- 4月6日
- 高野房太郎らが労働組合結成を訴える演説会を開催する
- 4月9日
- 日本人移民680人がハワイ・ホノルルに到着するが、そのうち560人が上陸を拒否される
- 4月22日
- 八王子大火(約3,100戸焼失)が発生し、東京朝日新聞が初めて伝書鳩による報道を行う
- 4月26日
- 国会図書館が開館する
- 4月27日
- 帝国図書館が開館する
- 5月1日
- 東京・京都間の電話が開通する
- 5月1日
- 京都帝国博物館の開館式が行われる
- 5月2日
- 台湾で地方官制が施行される
- 5月8日
- 渋沢栄一らが米国人モールスから京仁鉄道敷設権を譲り受ける契約を締結する
- 5月17日
- ブラジルに公使を置くことが決定される
- 5月28日
- タイに日本公使館が開庁する
- 5月29日
- 北海道に区制および一級・二級町村制が公布される
- 6月1日
- 官営八幡製鐵所開所
- 6月5日
- 東京に岩倉鉄道学校が開校する
- 6月16日
- アメリカがハワイ併合条約に調印する
- 6月18日
- 京都帝国大学設立
- 6月22日
- 京都帝国大学設立に伴い、帝国大学を東京帝国大学と改称する
- 6月26日
- 海軍が海外留学制度を再開し、財部彪・村上格一・林三子雄・広瀬武夫・秋山真之らを派遣する
- 6月28日
- 台湾のモリソン山を新高山と改称する
- 7月4日
- 労働組合期成会の発起人会が開かれる
- 7月30日
- 石川県七尾港の竣工・開港式が行われる
- 8月2日
- 日本勧業銀行が開業する
- 8月10日
- 両国橋の欄干が崩落し、多数の死傷者を出す事故が発生する
- 8月20日
- 日本法律学校が日本大学と改称する
- 8月29日
- 島崎藤村の詩集『若菜集』が刊行される
- 8月30日
- ブラジル・リオデジャネイロに日本公使館が開設される
- 9月11日
- 京都帝国大学が開学する
- 9月25日
- 日智(チリ)通商航海条約が調印される
- 10月1日
- 金本位制が実施される
- 10月2日
- 御歌所の官制が定められる
- 10月22日
- 海軍軍医学校が設置される
- 10月31日
- 進歩党が松方内閣との提携を解消する
- 11月14日
- ドイツが膠州湾を占領する
- 12月5日
- ベルギー・ブリュッセルに日本公使館が開設される
- 12月5日
- 労働運動機関誌『労働世界』が創刊される
- 12月21日
- 松方正義首相が辞表を提出する
- 12月21日
- 第11通常議会が召集される
- 12月25日
- 衆議院の解散が命じられる
- 12月31日
- 伊藤博文に第三次組閣の大命が下る
この年に始まったこと
1897年(明治30年)は、日清戦争後の経済発展を背景に、日本の金融制度と産業基盤が大きく前進した年です。近代国家としての経済体制が本格的に整い始めました。
- 金本位制が始まった
貨幣法が制定され、日本は金本位制を採用しました。国際的な信用を高める近代的な通貨制度が始まりました。 - 日本勧業銀行が開業した
産業資金を供給するための特殊銀行として日本勧業銀行が設立され、産業育成を支える金融体制が始まりました。 - 京都帝国大学が開学した
東京帝国大学に続く第二の帝国大学として開学し、高等教育の拡充が始まりました。 - 近代金融制度の新段階が始まった
金本位制の採用により、日本経済は国際金融市場との結びつきを強めました。 - 産業資本主義の発展が本格化した
金融機関の整備と産業投資の拡大により、日本の資本主義経済が新たな段階へ入りました。
1897年は、「金本位制と近代経済体制が始まった年」でした。
この年は何が変わったのか
1897年(明治30年)は、日本が本格的な産業国家へ成長し始めた年でした。金本位制導入によって経済制度が整備され、軍備拡張と重工業化もさらに進んでいきます。
金本位制によって近代金融制度が整えられた
1897年、日本は金本位制を採用しました。通貨価値の安定によって国際貿易や外国資本との取引がしやすくなり、日本経済は近代国家としての基盤を強めていきます。
貨幣制度改革によって経済近代化が進んだ
日清戦争の賠償金を背景に、政府は金融制度整備を進めていきました。経済の安定化は、産業発展と軍備拡張を支える重要な基盤となります。
八幡製鉄所建設によって重工業化が本格化した
政府は官営八幡製鉄所建設を進め、日本の重工業化を本格化させました。鉄鋼生産力強化は、軍事力増強と産業発展の両面で重要視されていきます。
軍備拡張によって列強国家化が進んだ
三国干渉後、日本は陸海軍拡張を積極的に進めていました。ロシアへの警戒感が強まる中で、「列強に対抗できる国家づくり」が重要課題となっていきます。
足尾鉱毒問題によって公害問題が深刻化した
田中正造による訴えなどを通じて、足尾鉱毒問題は全国的な社会問題となっていきました。近代産業発展の裏側で、公害や環境問題も表面化し始めます。
産業国家としての日本が形を整え始めた
金融制度・重工業・軍備・インフラ整備が同時に進み、日本は本格的な近代産業国家へ成長し始めていました。1897年は、経済面での近代化が大きく進展した重要な一年でした。
この年の重要人物
1897年(明治30年)は、金本位制が導入され、日本の経済制度が大きく転換した年です。また、日清戦争後の産業発展が続き、近代国家としての基盤整備が進められました。一方で、ロシアの極東進出が強まり、東アジア情勢は緊張を増していきました。この年を理解するうえで重要な人物を整理します。
- 松方正義
大蔵大臣として金本位制の導入を主導しました。日本の近代金融制度確立に大きな役割を果たした人物です。 - 伊藤博文
第2次伊藤内閣を率い、日清戦争後の国家運営を進めました。近代国家体制の整備を主導した中心人物です。 - 山縣有朋
軍備拡張と国防体制の整備を推進しました。ロシアの南下政策に備える立場から強い影響力を持っていました。
総理大臣
松方正義(明治29年9月18日~明治31年1月12日)
生活の話題
衣
- リボン・組紐が人絹で作られ始める
- ハイカラという言葉に対しバンカラの言葉が使われる
- 服飾調度品の上にも復古調盛ん、元禄復興の風あり
- 婦人の間に被布の代りに、毛製のアヅマコートが流行、地方では赤ケットと共に二重廻しが多く行われる
- コハゼのある足袋が普及し始める
- 著名の役者鉛毒で倒れ、メリー白粉好評を得る
- ぜいたくな婦人洋傘流行し始める
- 尾崎紅葉の『金色夜叉』発表されて、指輪流行
- 東京靴商組合できる
- ドル札入が流行
- スーツケース現れ始める
- 外国綿はアメリカ・エジプトよりも輸入されはじめた
食
- ラムネの瓶が胡瓜瓶から玉瓶にきりかえられ、更に売れ行きは倍増
- アルミニウム製の箸や弁当箱が作られる
住
- 横浜市西洋家具指物職同盟会創立
文学
- 『ほととぎす』創刊(1月)
- 『国史大系』刊行(2月)
その他
- 重要輸出品同業組合法公布
- 書籍館を帝国図書館と改称
- 職工義友会設立
- 日本橋に労働組合期成会発会
- 日比谷大神宮に二組の結婚式あり
- 東京に鉄工組合設立
- 常盤線・関西本線等、各鉄道開通するもの多し
地方の話題
東北
- 仙台で河北新報を創刊(宮城)
関東
- 神田の錦輝館で活動大写真が上映される
- 足尾銅山に対して鉱毒排除命令が出される(栃木)
中部
- 新潟における紫金牛の盆栽取り締りで騒動がおこる
- 中村大八郎らが長野で普通選挙同盟会をつくる
近畿
- 京都帝国大学が開校
四国
- 鳥居龍蔵が名東郡高崎村で人類学的調査をおこなう(徳島)
1897年のポイントまとめ
- 金本位制が採用された
明治政府は金本位制を導入し、日本の通貨制度は国際経済へ対応した近代的体制へ移行しました。 - 八幡製鉄所建設が決定した
政府は重工業育成を進め、後の日本工業化を支える八幡製鉄所建設へ動き始めました。 - 貨幣・金融制度の近代化が進んだ
日本銀行を中心とする金融体制整備が進み、日本経済は近代国家として成長を続けました。 - 軍備拡張政策が継続された
日清戦争後の国際情勢を受け、日本は陸海軍強化をさらに進めていきました。 - 近代工業国家への転換が加速した年であった
1897年は、金融・工業・軍事の各分野で、日本が本格的な近代産業国家へ成長し始めた重要な年でした。
1897年は、金本位制採用によって日本経済が国際水準へ近づいた年でした。 また、八幡製鉄所建設決定によって、日本は本格的な重工業化へ踏み出していきます。 近代国家としての経済基盤整備が大きく進み、日露戦争前夜の国力強化が加速した重要な時期となりました。
1897年のよくある質問 Q&A
Q. 1897年とはどんな年ですか?
1897年は、日本が金本位制を採用し、 近代的な通貨制度を確立した年です。
Q. 金本位制とは何ですか?
通貨の価値を金に基づいて決める制度で、 国際貿易を円滑にするために採用されました。
Q. なぜ金本位制が必要だったのですか?
国際経済に参加するためには、 安定した通貨制度が不可欠だったためです。
Q. 日本経済にはどのような影響がありましたか?
貿易が拡大し、 産業の発展が加速しました。
Q. なぜ1897年は重要なのですか?
経済面で近代国家としての基盤が完成し、 国力の強化につながったためです。
Q. 1897年の出来事はその後どうつながりますか?
経済力を背景に軍事力が強化され、
1904年の日露戦争へとつながります。
→ 1904年(戦争の開始)へ
Q. 他に重要な流れはありますか?
産業資本の成長が進み、 日本は工業国家として発展していきました。
Q. 1897年の重要人物は誰ですか?
松方正義などが金融政策を推進した重要人物です。
Q. 1897年は日本にとってどんな意味がありますか?
1897年は、経済面で近代国家としての基盤が確立され、 日本が国際社会で競争できる力を持った年です。
国力を高めた日本は、その後どこへ向かっていくのか?
軍備拡張と対外進出はさらに進み、日本は列強との競争を強めていきます。
日露戦争へ向かうその後の流れをあわせて理解できます。
