1870年(明治3年)は、明治政府が国家の基礎を整えながら、「中央集権国家」としての実体を急速に形にし始めた年です。
前年の版籍奉還によって統治の方向性は示されましたが、この年は軍事・制度・産業・生活の各分野で具体的な整備が一気に進みました。
国旗の制定や軍制の統一、産業施設の設置などにより、「国家としての統一」が現実のものとなっていきます。
つまり1870年は、「新国家の仕組みが具体的に動き出した年」といえます。
1870年の重要出来事【まずここだけ読めばOK】
■ 日章旗を国旗と定める
1870年、太政官布告により日章旗が正式に国旗と定められました。
これにより、日本という国家の象徴が明確となり、国内外における統一意識が強まります。
国家としての“見える統一”が進んだ出来事です。
■ 軍制の整備と統一
陸軍・海軍の制度が整えられ、陸軍はフランス式、海軍はイギリス式を採用する方針が決定されました。
また、各藩の兵は中央政府の管理下に置かれ、軍事力の一元化が進められます。
近代国家に不可欠な「中央集権的軍事体制」が形成された重要な動きです。
■ 工部省の設置と産業育成
政府は工部省を設置し、鉄道・造船・鉱業など近代産業の育成を本格化させました。
また、大阪造幣寮の開業など、経済基盤の整備も進みます。
国家主導の産業近代化が本格的に始まった年です。
■ 人民生活の近代化(苗字・帯刀など)
平民に苗字の使用が許可されるなど、身分制度の見直しが進みました。
また、士族の帯刀制限なども行われ、旧来の社会秩序は大きく変化していきます。
身分社会から近代社会への転換が進んだ象徴的な出来事です。
■ 交通・通信・教育の整備
鉄道建設の準備や郵便制度の調査、小学校設置などが進められました。
国家の一体化と近代化を支える基盤が整えられていきます。
この年は何が変わったのか
1870年は、日本が「新政府が存在する国家」から「統一された国家として機能する段階」へと進んだ年です。
それまでの改革は方針や枠組みにとどまっていましたが、この年には
・国旗の制定
・軍事の一元化
・産業政策の開始
・社会制度の変化
といった具体的な施策が一斉に進みました。
これはつまり、「国家の仕組みが実際に動き始め、全国を一つにまとめる力が働き始めた」ことを意味します。
つまりこの年は、「中央集権国家が“実体として動き始めた年」です。
この流れは、1871年の廃藩置県へとつながり、日本の統一は決定的なものとなっていきます。
出来事・事物起源・話題
- 1月3日
- 神道国教化強化の大教宣布の詔
- 1月5日
- 徳川慶喜以下旧幕臣の罪を宥す
- 1月17日
- 最初の陸軍始観兵式(明治天皇、宮城内旧本丸跡にて鎮台兵閲兵)
- 1月27日
- 太政官布告(第57号)を以て、日章旗を国旗と定める
- 2月3日
- 大教宣布の詔出る
- 2月3日
- イギリスから蒸気消防ポンプを輸入
- 2月13日
- 樺太開拓使を置く
- 2月15日
- 大阪造幣寮(現在の造幣局)開業
- 2月20日
- 京都諸藩兵を兵部省支配に管する
- 3月5日
- 東京湾最初の灯台、品川第二砲台に竣工
- 3月10日
- 続いて品川第四砲台にも灯台を竣工する
- 3月15日
- 我が国初の靴工場着工(伊勢勝造靴場)
- 3月17日
- 人力車の営業許可願提出
- 3月17日
- 東京築地の尾張邸跡に、鉄道敷設事務局が設置される
- 3月22日
- 和泉要助発明の人力車に営業許可出る
- 4月17日
- 東京駒場の調練場で、在京常備兵による初の天覧演習
- 4月22日
- 暦本類を密かに販売するを禁ずる
- 4月23日
- 鉄道敷設費のため、英国人より九分利附公債480万円を募る(外国公債募集の始)
- 4月24日
- 全国に種痘法を奨励勧告する
- 5月15日
- 陸軍旗章及びその他諸旗章制定
- 5月17日
- 北海道に屯田兵が入植する
- 6月8日
- 東京に小学校開校の布達
- 6月10日
- 石造の灯台、樫野崎に竣工
- 6月12日
- 東京府下に小学校6校を設置
- 6月23日
- 前島密、西洋諸国の郵便事業視察のため、横浜を出帆
- 7月20日
- 小松帯刀逝去(享年36歳)
- 7月23日
- 弘文・淳仁・仲恭の三天皇に追諡
- 7月28日
- 普仏戦争に日本は中立を宣言する
- 8月13日
- 相模城ヶ島の燈台、竣工点火
- 8月14日
- 工部大学の前身たる工学寮及び測量司を設置
- 8月14日
- 天文暦道局を県学局と改称
- 8月22日
- 東京府下に中学校を開設す
- 9月8日
- 「君が代」が初めて演奏される
- 9月19日
- 平民に苗字使用を許可(四民平等)
- 9月25日
- 囚人に刺青することを廃止する
- 9月25日
- ヨーロッパ式機械製糸法はじまる
- 10月2日
- 最初の特命全権公使任命(英・仏・独の三ヶ国兼務の特命全権公使に鮫島尚信、米国は森有礼)
- 10月2日
- 兵制統一、陸海軍の制式決まる(陸軍は仏式、海軍を英式と決定)
- 10月3日
- 皇族旗、将旗などの旗章制定される
- 10月18日
- 外国人に東京府下の遊覧を許す
- 10月18日
- 岩崎弥太郎、九十九商会設立
- 10月20日
- 新律綱領領布、工部省設置
- 10月22日
- 東京濱殿の海軍所を築地に移す
- 10月24日
- 最初の鉄道トンネル工事
- 10月27日
- 初めて医学校(後の東京大学医学部)にて人体を解剖し実習を行う
- 11月3日
- 徴兵規則領布(府藩県一万石毎に士族平民を問わず5名宛徴募の制となる)
- 11月25日
- 松代藩で7万人の農民蜂起、各地で「世直し」の騒乱が続く
- 12月4日
- 群馬県富岡製糸場設立布告される
- 12月9日
- 新たに総裁、議定、参与を置く
- 12月12日
- 最初の日刊紙「横浜毎日新聞」発刊
- 12月22日
- 陸海軍の洋式服制定められる
- 12月24日
- 士族といえども特定以外の帯刀を禁ず
生活の話題
衣
- 華族の染歯・眉をかくことを禁止
- 大阪で百姓町人のコウモリ合羽・ブンランケットの着用を禁ず
- 庶民の帯刀禁止
- 東京・大阪でトンビの流行始まる
- 手編みのメリアス・シャツ・ズボン下東京都下に普及し始める
- 東京に散髪流行
- 太政官制服制定
- 軍服制定
- 西村勝三、製靴工場設立
食
- 外国人の手でサイゴン米しきりに輸入
- 民部省、甜菜試作を東京府にさせる
- 愛媛県、アメリカ人より洋牛買い搾乳を始める
- 山梨県の山田宥教らブドウ酒を試作
- 横浜でアイスクリーム売られる
この年のポイントまとめ
✔日章旗の制定により、国家の象徴が明確になった
✔軍制の統一により、中央集権的な軍事体制が整った
✔工部省設置などで産業近代化が本格化した
✔苗字許可や帯刀制限などで社会構造が変化した
✔日本は「新政府の国家」から「統一国家」へと進んだ
1870年は、明治政府の構想が現実の制度として動き始め、日本が一つの国家として統合されていく重要な年です。
この年を理解することで、1871年の廃藩置県と近代国家の完成への流れがより明確に見えてきます。
