乃木希典の名言・語録
武士道は言葉ではない
かってある人が乃木に「武士道」とは如何なるものでありましょうかと尋ねたところ、乃木は言下に、
武士道は言葉ではない
と答えた。 そして自分は軍人であるから、政治など関係すべきでないと議員選挙にはいつも棄権した。
他人から職業を探して貰うようなやくざ者が何になるか
乃木は陸軍大将伯爵であり、武勲嚇々として一世の仰望するところがあったから、親族故舊などが就職の世話を依頼してきたが、その人の為に職を設けることは乃木の苦痛するところであったから、
他人から職業を探して貰うようなやくざ者が何になるか
と相手にもしなかった。
私よりも馬がよく働いたから
乃木希典が軍人としていかに馬を寵愛していたかは何人も知っているところであり、家は粗末でも厩(うまや)だけは立派であった。日露戦争の終った後のこと、大将は勲功によって金鵄勲章を賜り、勲章に添うところの年金も賜ることになった。
戦時中は、私よりも馬がよく働いたから――
と、大将はそう言って、勲章の年金の一部は馬丁に渡して、馬の為に使わせることにした。
乃木院長の訓示
乃木希典が学習院の院長時代に、学習院初等学科学生に与えた訓示
- 口を結べ。口を開いて居る様な人間は心に締りがない
- 眼の注け方に注意せよ。始終キョロキョロして居るのは、心の定まらない証拠である
- 敬礼の時は先方をよく注視せよ
- 自分の家の紋所、家柄、先祖の事はよく聞いて忘れぬ様にして置け。先祖の祭は大切であるぞ
- 男子は男らしくしなくてはいかん。弁当の風呂敷でも、赤いのや美しい模様のあるのを喜ぶ様では駄目だ
- 決して贅沢するな。贅沢程人を馬鹿にするものはない
- 人力車には成る可く乗るな。家で人力車をよこしても乗らないで帰る様にせよ
- 寒中水で顔を洗うものは幾人あるか。湯で洗う様ではいかぬ
- 寒い時は暑いと思い、暑い時は寒いと思え
- 破れた着物を其の儘着て居るのは恥だが、そこを継ぎをして縫って着るのは決して恥ではない。いや恥どころではない。
- 恥を知れ。道に外れた事をして恥を知らないものは禽獣に劣る
- 健康の時は無理の出来る様に体を鍛錬せよ。けれども一旦病気になったら医者の云う事をよく聞け
- 洋服や靴は大きく作れ。格好などかまうな
- 学習院の学生は成るだけ陸海軍人になれとは、陛下の御沙汰であるから、体の丈夫なものは成るべく軍人にならなければならぬ。けれども生まれつき体の弱い者もあり、又種々の事情でなれぬ者もあろう。是も仕方がないが、何になるにも御国の為に役に立つ人にならなければならない。国の為に役に立たない者、或は国の害になる様な人間は死んで仕舞った方がよいのである。